国の擬人化
国の擬人化(くにのぎじんか)とは、国家(政府)や地域を人物として擬人化すること。
概要
擬人化は対象に人間のような内面・心理を設定することで、世界を認知するための方法である[1]。社会的な存在である国家や地域を人として表すことは、メッセージを受け取る側と送る側にとっても関係性を強化することにつながり[2]、政治的パンフレットや美術作品などで伝統的に広く用いられていた。古代都市国家のアテナイは女神アテーナーを象徴としている。またアメリカ合衆国をあらわすアンクル・サム、ドイツをあらわすゲルマニア、フランスのマリアンヌが知られる[2]。それぞれの国家の国獣や国旗を国家の擬人とする事もしばしば見られる。[3]
伝統的に用いられる国の擬人化
これらは非公式・公式を問わず、表現として用いられた国家の擬人化である。
国 | 画像 | 名称 |
---|---|---|
アルバニア | マザー・アルバニア(英語版) | |
アルゼンチン | アルゼンチンの擬人化(英語版)、ガウチョ、マルティーン・フィエロ | |
アルメニア | マザー・ハヤスタン(英語版) | |
オーストラリア | リトル・ボーイ・フロム・マンリー(英語版) 、Australia 、ボクシング・カンガルー | |
オーストリア | オーストリア(擬人化)(ドイツ語版) | |
バングラデシュ | バングラ・マー(英語版) | |
ベルギー | ベルギー(擬人化)(スペイン語版)、小便小僧 | |
ブラジル | 共和国の女神(英語版)、バンディランテ (サンパウロ州)、Candango(ブラジリア)、ガウチョ (リオグランデ・ド・スル州) | |
ハンガリー | ハンガリア(擬人化)(英語版) | |
ブルガリア | 母なるブルガリア | |
カンボジア | プレア・トングとネアン・ネキイ(英語版) | |
カナダ | アダム・ドラール・デ・ゾルモー(英語版)、王立カナダ騎馬警察、ジョニー・カナック(英語版)、37の老人(wikidata) (フレンチ・カナダ)、母なるカナダ | |
チリ | ロト (擬人化)(英語版)、ウアッソ、セニョリータ・ファニーナ(英語版) | |
コロンビア | フアン・バルデス | |
中国 | 黄龍 | |
ブータン | ドゥク | |
チェコ | Čechie、チェコ・ヴァセック(英語版)、二本の尾を持つライオン、善良な兵士シュヴェイク(英語版) | |
デンマーク | オジェ・ル・ダノワ、母なるデンマーク(英語版) | |
ドミニカ共和国 | Conchoprimo | |
エジプト | 世界の母(Om El Donia) | |
エルサルバドル | 世界の救世主の記念碑(英語版) | |
欧州連合 | エウローペー、エウローパ・レーギーナ | |
フィンランド | スオミネイト | |
フランス | マリアンヌ、ガリアの雄鶏(英語版) | |
ジョージア | ゲオルギオス (聖人)、グルジアの母(英語版) | |
ドイツ | ドイツ: ゲルマニア、ドイッチャー・ミヒェル(英語版) バイエルン: バヴァリア (擬人化)(ドイツ語版)、ベルリン: ベロリナ(英語版)、ブラウンシュヴァイク: ブルノニア、フランコニア: フランコニア, ハンブルク: ハーモニア(英語版)、プロイセン:ボルシア、プファルツ選帝侯領: パラティア、ザクセン:サクソニア | |
ギリシャ | ヘラス(擬人化)(英語版)、ギリシア、アテーナー | |
ハイチ | エジリ・ダントール(英語版) | |
アイスランド | レディ・オブ・マウンテン(英語版) | |
インド | バーラト・マータ、ドゥルガー | |
インドネシア | イブー・ペルティウィ | |
イラン | キュロス2世 | |
アイルランド | エリウ、バンバ、フォドラ、キャスリーン・ニ・フーリハン(英語版)、ヒベルニア (擬人化)(英語版)、Granuaile、Scotia[4] | |
イスラエル | スルリク(英語版)、 | |
イタリア | イタリア・トゥッリタ | |
北マケドニア | 母なるマケドニア[5][6] | |
マルタ | メリタ (擬人化)(英語版) | |
メキシコ | チャーロ (メキシコ)(英語版)、チナ・ポブラナ、ペラード(英語版)。 | |
モンゴル | チンギス・カン | |
オランダ | オランダの乙女(英語版)、ハンス・ブリンカー(英語版)、(ゼーラント州: en:Zeeuws Meisje (margarine)のキャラクター) | |
ニューイングランド | ブラザー・ジョナサン(英語版)、ピューリタン、マツ. | |
ニュージーランド | キーウィ、ジーランディア(英語版)、南の男(英語版) (南島 (ニュージーランド)) | |
ノルウェー | 母なるノルウェー(ノルウェー語版)、オラ・ノールマン(英語版)とその妻カリ・ノールマン。ノリ (北欧神話)(英語版) | |
パレスチナ | ハンダラ(ナージー・アル=アリー(英語版)のキャラクター) | |
ペルー | 祖国ペルー(英語版) | |
フィリピン | フアン・デラ・クルス、フィリピナス、ラプ=ラプ, ホセ・リサール、マリア・クララ | |
ポーランド | ポロニア (擬人化)(英語版)、レッヒ | |
マレーシア | ハン・トゥア(英語版) | |
ポルトガル | ゼ・ポヴィーニョ(英語版)、ルシタニア、共和国の女神(英語版)、バルセロスの雄鳥(英語版)、ポルトガルの守護天使 | |
ルーマニア | ルーマニア(擬人化) | |
ロシア | 母なるロシア、ロシアの熊、冬将軍 | |
モンテネグロ | 母なるモンテネグロ(英語版) | |
クロアチア | 母なるクロアチア(英語版) | |
スコットランド | カレドニア, ジャック・タムソン、スコタ(英語版) | |
セルビア | 母なるセルビア(英語版)、コソヴォの娘 | |
シンガポール | マーライオン | |
タイ | サイアム・デヴァディラジ(英語版) | |
朝鮮半島 | アムールトラ | |
スロバキア | ユライ・ヤーノシーク | |
スロベニア | マチャジュ王(英語版) | |
スペイン | ヒスパニア (寓意)(英語版) | |
ジョージア | グルジアの母(英語版) | |
ベネルクス | レオ・ベルギクス | |
スウェーデン | モダー・スヴェア(英語版) | |
スイス | ヘルヴェティア | |
トルコ | トルコ(擬人化) | |
リトアニア | リトアニア(擬人化) | |
ウクライナ | コサック・ママーイ | |
イギリス | ブリタニア (女神)、ジョン・ブル、ライオン、ブルドッグ | |
アメリカ | コロンビア、アンクル・サム(連邦政府)、自由の女神 | |
日本 | やまとひめ[7] [8] |
ギャラリー
- 1914年の三国協商を表したポスター。 マリアンヌ(フランス)、マザー・ロシア(ロシア)、ブリタニア(イギリス)が一堂に会している。
- 第一次世界大戦当時のアメリカ合衆国食品局のポスター。コロンビアが描かれている
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- ゲルマニア。 フィリップ・ファイト(1848年)
- スペイン第二共和政において描かれた、 ヒスパニア (擬人化)(英語版)とマリアンヌ(1931年)
- ウジェーヌ・ドラクロワ『ミソロンギの廃墟に立つギリシア(英語版)』 (1827年)
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- イタリア・トゥッリタ(イタリア) とゲルマニア。 ヨハン・フリードリヒ・オーファーベック作。ドイツとイタリアの友好関係をあらわしている。
- ノルウェー、デンマーク、スウェーデンを現した19世紀のポスター。
- レフとチェフとルス(ポーランド、チェコ、ウクライナ) と ポーランドを現す白い鷲
- スウェーデンの象徴であるモダー・スヴェア(英語版)の銅像。ストックホルム。
- 第一次世界大戦における ジョン・ブルのポスター。
- バーラト·マータの像。
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- アルゼンチンとブラジルの友好関係(英語版)を現した図。両国を現した女神が握手を交わしている。
- ゼ・ポヴィーニョ(英語版)。19世紀のポルトガルの労働者を現している。
- 1806年のフランス。ユダヤ人を現した人々とナポレオン・ボナパルト
- ジェームス・ギルレイが1803年のアミアンの和約を描いた戯画。 「フランス市民」と太ったブリタニアにキスをしている。
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- 『ルーマニアの解放』コンスタンティン・ダニエル・ローゼンタール
- 第一次世界大戦におけるルーマニアとドイツの休戦を現したフランスのパンフレット。屈強な男がドイツ、女性がルーマニア
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- 司馬江漢が描いた、日本と中国、西洋の擬人化。
- 自由の象徴であるフリジア帽を掲げるコロンビア。クリッパー (船)の広告に用いられた、ヤング・アメリカ運動(英語版)のカード
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- アイスランドの象徴、レディ・オブ・マウンテン(英語版)
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- 『自由ブルガリア』ゲオルギ・ダンチョフ(英語版)のリトグラフ。
- フレデリック・デ・ウィート(英語版)が描いた17世紀のヨーロッパ地図。
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- ミセス・ブリタニアとその娘のミス・カナダ、 それに言いよるブラザー・ジョナサン(英語版)(ニューイングランド)を描いた1886年の政治風刺画。
- ナポレオンの首を掲げるジョン・ブル。ジェームス・ギルレイ(1803年)
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- ジョナサン・スウィフトとアイルランドの擬人化
- 19世紀に建造された、擬人化したババリア(バイエルン州)の銅像。
- オットー・フォン・ビスマルク主導のフランス孤立政策によって動かされるヨーロッパの政治情勢を描いた戯画。
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- ポーランドボールは2009年頃に生まれた、国家を擬人化したネットミームである。
大衆文化における擬人化
現代の日本においては、人物(歴史上の人物や神話の登場人物など)や動植物から非生物(天体、鉄道、言語、元素など)まで、あらゆるものが擬人化、キャラクター化されている[2]。それら萌え擬人化の一つとして国(広義には州や非独立地域、民族の擬人化を含むこともある)の擬人化作品も、インターネット上などで多く見られる。
SNS上のみで展開される個人規模の物から、メディアミックスされる大規模な商業作品まで幅広く存在し、前者の例はポーランドボール、後者の例としては、アフガニスタンと周辺国を擬人化したあふがにすタン、アニメ化や舞台化もされたヘタリア、地政学的な側面を重視した地政学ボーイズなどが存在する。
また、各都道府県や自治体などが、広報活動の一環として各地域を擬人化したキャラクターを制作していることもある[9]。
脚注
- ^ 関沢英彦 2012, pp. 21.
- ^ a b c 関沢英彦 2012, pp. 26.
- ^ “中国、「最後の晩餐」なぞらえG7風刺 ネットに拡散”. 日本経済新聞. 2024年7月13日閲覧。
- ^ O'Clery, M. (2003) Annals of Ireland by the Four Masters as translated into English
- ^ A Manifesto from the Provisional Government of Macedonia. (1881). "Our mother Macedonia became now as a widow, lonely and deserted by her sons. She does not fly the banner of the victorious Macedonian army"
- ^ Bulgarian graphic representation of Bulgaria, East Rumelia and Macedonia
- ^ 林みちこ『明治政府の対外美術戦略に関する研究 : 1910年日英博覧会をめぐって』筑波大学〈博士(芸術学) 甲第8234号〉、2017年。 NAID 500001374207。https://tsukuba.repo.nii.ac.jp/records/43176。
- ^ “「ハッピー」”. タバコと塩の博物館. 2024年8月3日閲覧。
- ^ 真田風・倉田陽平「「都道府県擬人化」の分析」
参考文献
- 関沢英彦「父さんは犬 : 広告における擬人化 (林龍二教授退任記念号)」(PDF)『コミュニケーション科学』第35号、東京経済大学 コミュニケーション学会、2012年、19-47頁、NAID 120005281415。